膵癌術前治療研究会の発足に当たって
このたび膵癌術前治療研究会を発足することになりました。膵癌は現在においても最難治癌の一つであり、その成績向上は急務であると考えます。根治が得られる唯一の治療法は外科切除ですが、切除率は低くまた治癒切除が得られても予後は不良です。さらに拡大郭清の限界も明らかになり、膵癌の治療成績向上のためには抗癌剤や放射線治療を組み合わせた集学的治療が必要と考えられます。術後補助化学療法としては塩酸ゲムシタビン投与が標準治療となりつつありますが、その成績は満足すべきものではありません。一方、術前治療が標準治療になりつつある食道癌や乳癌と同様、膵癌に対する術前治療がいくつかの施設で開始され、切除率向上や予後改善への可能性が報告され始めています。しかし各施設が少数例で検討するのみでは術前治療は標準治療には成り得ません。術前治療を実施している施設が集まりお互いに意見交換しながら最良の共通プロトコールを作成し、術前治療が標準治療となり得るかを検討することが本研究会の目的です。本研究会の最終的なゴールは、術前治療に関する第3相臨床試験を行うことと考えています。
膵癌の治療成績向上はエベレストのように高い山ですが、これを超えるためには外科治療・薬物治療・放射線治療などの各種治療法を組み合わせ、また日本全国の英知を集める必要があると考えています。ご興味のある方のご参加を歓迎いたします。
東北大学消化器外科 海野倫明